トロイダルコイルのインダクタンスのばらつき、巻き方によるインダクタンスの変化などを実験で確かめてみました。
T50-6に10回巻きのコイルを3個作成しました。
それぞれ特性をVNWA3で測定しました。
インダクタンスはほぼ同じ、Qが多少バラついていますがそれほど大きくありません。 バラツキは、ほとんどありませんでした。
10MHzで算出したAL値は4.8で、サトー電気のサイトの値4.0とは多少異なっています。 実際にコイルを作製するときは、実際のコアに試しに巻いてみて、AL値を算出した後巻き数を決めるのがいいと思います。
Qの値から推測して、このコアを使用範囲は上限として20~30MHz程度です。 共振回路でなく、チョークのような高周波電流を阻止するだけの用途では、Qは高い必要はないので、インダクターとして機能している限りは使えそうです。(~100MHzぐらい?)
次に、巻き方を変えて測定してみました。 No.1のコイルの巻き線を密巻きにしてみました。
測定結果です。
インダクタンスが68.8%も増加しました。 これは、ちょっと意外な結果です。
いままで、”トロイダルコアは、磁束がコア内に閉じ込められるのでインダクタンスは巻き数だけで決まる”と思っていました。 インダクタンスの値から、”偏って巻くより均一に巻いた方が、漏れ磁束が多い”ということになり、予想外の結果です。 この結果は、”トロイダルコイルでも、調整できる”ということになります。
ちょっと信じがたい結果になりましたので、もう少し検証してみる必要があると思いますが、今日の実験の結論としては、
・巻き方が異なっていなければ、トロイダルコイルのバラツキは少ない。
・AL値は、使用するコアに試しに巻いてみて算出した値を使ったほうがよさそう。
・巻き方でインダクタンスは、かなり変化する。 このことは、巻いた後で多少はインダクタンスを調整できることを意味する。 (要追加実験)
・T50-6の使用可能周波数範囲は、上限20~30MHz程度、ただしチョーク等の用途には、100MHzぐらいまで使えそう。(要追加実験)
もう少し、実験を進めたいと思います。
JJ2PNX2021年11月15日 15:39 /
トロイダルコアは磁束を閉じ込められるから再現性が良いということが一般的な売りの1つですが、 実は磁束を閉じ込めることが出来ていないので、このような結果となります。 比透磁率を考えてみてください。例えばμs=40の場合、真空に対して1/40の磁気抵抗ということです。 空間の電気抵抗は導体に比べて完全に無視できますが、磁気抵抗は真空とコアでそんなに大きく変わりません。 μs倍なんです。そこら中に磁束が漏れるということがおわかりになるかと思います。