トランスの実験。 1対1のトランスのSパラメータがどうなるか?
まずは、理想的なトランスでのシミュレーション。
周波数がおよそ40MHz以下では、等コンダクタンス円に沿って移動し、負荷に並列に接続されたインダクタのような軌跡をたどる。
40MHz以上では、等レジスタンス円に沿って移動し、負荷に直列に接続されたインダクタのような軌跡をたどる。
ちなみに、結合係数は、0.99とした。
次に結合係数を極端に小さくしてみる。
およそ9.4MHzより低い周波数では、等コンダクタンス円からはずれて、9.4MHz以上では等レジスタンス円から外れた軌跡をたどる。
これは、教科書によると、結合していない磁束による漏れインダクタンスの影響らしい。 等価回路に置き換えてみると..
等価回路では、負荷に並列のインダクタの値は、k倍になり、漏れインダクタとして、負荷に直列に(1-k)倍のインダクタが挿入される。
シミュレーションの結果は、結合係数0.99の結果とほぼ一致する。
同様にk=0.8の場合の等価回路でもシミュレーションしてみると、これもほぼ一致する。
こんどは、実際にトランスを作製して、VNWA3でSパラメータを測定してみた。
T68-6を使ってトランスを作製した。 1次、2次ともインダクタンスは、1.45uHだった。
周波数が低い領域では、等コンダクタンス円に沿って移動しているけど、その後は、シミュレーション結果とは全く一致していない。
シミュレーション結果と一致させるために、考えられる浮遊容量等を追加してシミュレーション回路を修正したみた。
測定治具のSMAコネクタの浮遊容量を測定してみたら、1.1pF程度だった。 また、トランスの線間容量は、37pFだった。 これらを考慮してシミュレーションしてみた。
残念ながら一致しない。
まだ何か足りないか、考え違いをしているのか..
コアが絡むと、途端に難しくなるような気がする。 スミスチャートに関する今自分が持っている知識では、決まった軌跡で移動するものに関しては、どんな事が起きているのかある程度予測がつくけど、等レジスタンス円とか等リアクタンス円を外れた軌跡での移動は、なにが起きているのかさっぱり予測がつかない。
それにしても、高周波回路は、今更ながら奥が深くて、面白いなぁ..。