事の発端は、サトー電気で販売されている#75材のフェライトコアの特性を測定しようと思ったことから始まりました。 #75材はフェライトコアの中で一番透磁率が高いのですが、サトー電気のサイトにはデータ不明ということで、AL値の記載がありません。
実際にコイルを巻いて測定してみました。 FT37-75に10回巻いてLCRメータ(LCR45)で測定した結果は、193.6μHでした。 AL値を計算してみると、1936でした。
FT37-77のAL値の記載はないのですが、FT50-77のAL値は1100となっています。 #77の透磁率が2000、#75の透磁率が5000とあるので、FT37-75のAL=1936というのは妥当な値と考えられます。
どの程度の周波数まで使えるのか、VNWA3で測定してみました。 透磁率が高いので、高い周波数では使えないと考え1MHz~10MHzでスイープしました。その際、VNWA3にはLCRメータの機能もあるので、S11の測定結果に合わせて表示させてみました。
VNWA3のLCRメータの測定結果が、LCR45の測定結果と全く違います。 ちなみに、LCR45の測定は、200kHzです。 測定周波数が違ますが、測定結果の差が大きすぎるように思います。
うーむっ.. どっちが正しいの? そもそもVNWA3でちゃんと測定できているのか?
そこで別のコアで測定してみました。 カーボニル鉄系のT37-12というコアに18回巻いたコイルがあったのでそれを測定してみました。 LCR45での測定値は、0.53μHです。 AL値は1.64と算出され、これは、サトー電気のサイトに記載されている1.5に近い値です。
次にVNWA3で測定してみました。
測定結果は多少違いますが、測定周波数が異なっていますので、まあ、それ程違和感のある結果ではありません。
それでは、FT37-75の場合は何が問題なのか?ということになります。 それから、周波数をスイープした場合、ImagZの値は変化していますがVNWA3の場合のLの値はどの周波数で算出しているのか?という疑問も出てきました。
そこで、VNWA3のマニュアルを確認してみました。 私は、”マニュアルは見ない派”ですので、何か困った時にしかマニュアルは見ません。 そのことにより、何度も失敗したり回り道をしていますが、まあ、性格だからしょうがない..。
そんなことはどーでもいいのですが、VNWA3のマニュアルは、目次がないので、必要なところにたどり着くのに苦労します。
そんなこともどーでもいいのですが、343pからLCRメータの説明があります。
適当に翻訳すると、
・中心周波数を任意の値に設定して、スパンを0にしろ
・スパンは0じゃなくてもいいけど、その場合は、スイープで平均する
・1秒間に1~10回の率でスイープするようにデータポイント数とデータポイント毎の時間を設定しろ
・SOL校正を行って、必要に応じてポートエクステンション機能を使って校正面を設定しろ
つまり、周波数をスイープしないようにして測定しろということですね。 まあ、当たり前といえば当たり前か..。 スイープしたら平均化するというのも、まあ、そうかという感じです。 FT37-75の場合は、スイープ内に自己共振点が存在しているので、平均すると測定結果がおかしくなっている可能性は十分考えられます。
3つ目は、”ちょっと何言ってるかわかんないですけど”状態ですが、データポイント当たりの測定時間を1msと100msに設定して比較してみましたが、大きな差はありませんでした。
そこで、周波数を1MHz、スパンを0にしてFT35-75を測定してみました。 本当は200kHzで測定したいのですが、VNWA3は周波数の低い領域の測定は得意ではないのです。
LCR45の測定値が、193.6μHなので、並列モデルの方はそれほどの差はないようになりました。
結局、VNWA3のLCRメーター機能を使う場合には、”スパンを0にして測れ”ということと、”#75材は、低周波でしか使用できない”という結論になりました。
オーディオフィルタの実験などに使えそうなので、気が向いたら使ってみようと思います。
最初の結論は、マニュアルを最初に読んでいれば判ったことなんですが..また、回り道をしてしまったかな..。